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付き合うまでの。
誘い、罠をかけ、獲物がこの手に墜ちてくるまでを楽しゲームなら飽きるほどしてきた。
ハンターは何時だって僕だ。
追われる態をとっても、そう仕向けるのは何時も僕で。
まさか、自分が囚われることがあるだなんて。
興味深い。
自分に。ここまで人間らしい感情があるとは、思わなかった。
元々、欲望には忠実で。
持って産まれた人より美しい顔と、恵まれた環境のおかげで欲しいものは、いつも手にしてきた。
けれど、どんな相手に対しても本気にはなれなかったのに。
偶然出掛けた夜の公園で、水に沈んだ石像のように動かない彼をみた時から、もうずっと囚われている。
彼を手に入れるために、会社を立ち上げて。自分の手元に誘き寄せたまでは良かったが。
普段の僕らしくもなく、何年も手をこまねいてやっと落とした。
墜ちてきた実は甘美で、たとえようもなく甘かったけれど。
頭の何処かで、彼に対する僕の説明のつかない執着もこれでケリがつくのかと、淋しく思ったりもしたのに。
何故か、日毎に引力をます彼への求心力。
これが恋かと気付いたときには、どうしようもなく溺れた後だった。
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