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ノックの後に、淹れたての僕好みの珈琲を手にした恋人が入ってきた。
ちょっとだけ呆れた顔をして、珈琲を置かれた。
どうやら、僕がわざと休憩室に原西を連れ出した目的はバレているらしい。
予想より察しのよい可愛い野獣に、ニッコリと微笑む。
「良くできました。」
せっかく誉めたのに、逆に苦虫でも噛み潰したような顔をされた。
「満足ですか?」
溜め息を吐きながら、かえされた言葉に首を振りながら、彼を引き寄せる。
先程より深い口づけを交わして、離れていく唇を目で追った。
原西の身体から発せられた熱が。
僕を包んだ深い森の匂いと共に、去っていく。
それだけの動作で僕の引き金を弾いておきながら気づきもしない。
焦らされて喜ぶような嗜虐趣味はなかったはずだけど。
彼となら、それも良いかと思えた。
机の上に置きっぱなしだった小箱を手にして、綺麗につつまれた包装紙をはがす。
宝石のように納められていた黒い塊を手にして唇に運んだ。
彼に準備したものだが、気が変わった。
こんなに彼に夢中なのだという事は、僕だけの秘密でいい。
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