新堂さんの初恋

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「なに?」 口元まで運んだ手をつかんだ原西を見た。 見上げた原西の表情が。 完全にプライベートのソレで、虚をつかれる。 「原西?」 今度こそいぶかしげに発した問いに、憮然とした顔で掴まれた手の力を強められた。 そのまま力を込めて腕を引っ張られて、摘まんだ指先ごと咥えられる。 無表情で指先をくわえた男を、眼を細めて見上げた。 小さな塊は熱い口内で溶け、やがて残った指だけを丹念に舐め上げた原西に再度問うた。 「だから、なに?」 「アンタのは、コッチです。」 フンと鼻から息を吐いて、偉そうに差し出されたチョコを見て、固まった。 目の前に突き付けられたのは、小袋に分けられたチョコレートの一片。 「随分と不公平なトレードだね。」 片方の眉をあげながら、睨み付ける。 「家に帰れば、ちゃんとしたのを用意してます。 今はコレで我慢しといてください。」 軽く笑って頭を撫でられて、ムッとした。 「嫌だ。 僕は今、食べたいの。」 困るだろうと分かって駄々を捏ねてやる。 いくら甘やかしているとはいえ、これは行き過ぎだろう。 しつけ直しの必要を感じて強く突っぱねると、溜め息を吐き出した原西が覆い被さってきた。 そのまま唇が合わさってきて、舌先からユックリと絡み付いてくる。 丹念に重ねられた舌から、甘いチョコレートの風味が口内に拡がって鼻に抜けた。 気分じゃないと。追い返そうと抵抗した動きを逆手にとられて、より深く口づけされる。
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