1809人が本棚に入れています
本棚に追加
「なに?」
口元まで運んだ手をつかんだ原西を見た。
見上げた原西の表情が。
完全にプライベートのソレで、虚をつかれる。
「原西?」
今度こそいぶかしげに発した問いに、憮然とした顔で掴まれた手の力を強められた。
そのまま力を込めて腕を引っ張られて、摘まんだ指先ごと咥えられる。
無表情で指先をくわえた男を、眼を細めて見上げた。
小さな塊は熱い口内で溶け、やがて残った指だけを丹念に舐め上げた原西に再度問うた。
「だから、なに?」
「アンタのは、コッチです。」
フンと鼻から息を吐いて、偉そうに差し出されたチョコを見て、固まった。
目の前に突き付けられたのは、小袋に分けられたチョコレートの一片。
「随分と不公平なトレードだね。」
片方の眉をあげながら、睨み付ける。
「家に帰れば、ちゃんとしたのを用意してます。
今はコレで我慢しといてください。」
軽く笑って頭を撫でられて、ムッとした。
「嫌だ。
僕は今、食べたいの。」
困るだろうと分かって駄々を捏ねてやる。
いくら甘やかしているとはいえ、これは行き過ぎだろう。
しつけ直しの必要を感じて強く突っぱねると、溜め息を吐き出した原西が覆い被さってきた。
そのまま唇が合わさってきて、舌先からユックリと絡み付いてくる。
丹念に重ねられた舌から、甘いチョコレートの風味が口内に拡がって鼻に抜けた。
気分じゃないと。追い返そうと抵抗した動きを逆手にとられて、より深く口づけされる。
最初のコメントを投稿しよう!