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普段の原西は職場でのこうした接触を嫌がる。
初めての時を除いて、職場で原西からキスしてきたのはこれが初めてだった。
しかも、チラリと見上げた原西の目は欲望とは違う色合いで。
肩を押さえていた手は、滑るように脇腹を過ぎてシャツの中に入ってきたが、その指に熱は感じない。
「原西?」
欲望より違和感が強くいぶかしむ。
今は勤務中だ。
職場でコトに及ぼうとするだけでなく、終業間近とはいえ勤務時間に手を出してくるなど普段からは考えられない。
撫で上げてきた手首をつかんで、目をあわせると、フイに視線を外された。
「どうしたの。」
優しく問いかけると、捕まれていた手をほどいて身をはなした。
「他の誰かからのチョコを、今日アンタに食わせるほど、俺の心は広くありません。
それに、もしコレがアンタの買ったチョコなら、俺以外の奴が食べるのはゆるしません。例え、それが要本人だとしてもです。」
目線を反らしながら、そう言われた。
「、、、ふーん。」
嘘はいってないようだが、それだけでもない。
今、言ったことだけが理由なら、原西は僕の手を止めてまでチョコを食べるのを止めたりはしなかっただろう。
内心どうであろうと、黙って食べさせたはずだ。
さて、と。腕を組んで椅子に座りなおした。
朝、家を出た時は普通だった。
二人で同時に出社して、離れたのは二時間ほどの来客時だけ。
その二時間で、何があったのか。
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