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「本当に僕には、勿体無いね。」
口にするつもりのなかった想いが、ポロリと口からこぼれ落ちた。
誠実で、真っ直ぐな原西。
傷つくことなど、恐れもせずにまっすぐに僕に向かってきてくれる美しい魂。
怖がりで、いつも先回りばかりして。
不安の種ができる度に、原西を試すような真似ばかりする卑怯な自分。
相応しくないのは、分かっている。
けれど。手放せない。
原西といると、こんな風に生きていけたらと願う誠実さと愛に満ちた自分になれる気がする。
他の誰かでは、代わりになどならない。
原西の幸せを思えば、本当は自分など相応しくはないのだ。
もっと心の綺麗な彼に、よく似合う相手がいることも分かっている。
例えば、喜多川君のように真っ直ぐな人間。
そこまで考えて、首を振った。
自分自身を貶めても得るものは少ない。
例え、それが真実だとしても。
実現できない可能性などないも同じだ。
「要。」
名を呼ばれ、顔をあげた。
「アレは、俺にですか?」
目線で机の上をさされて、頷いた。
「良かった。」
口を開く前に、肩口にポスンと頭をのせられ、抱きしめられた。
僕の言葉を、わざとふさいだ優しい男を抱き締め返す。
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