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僕に見せずに処分することだってできたのに。其を良しとしない正義感を心地好く思う。
彼が車を回してくる間に、鞄から用意していたもう一つのプレゼントを取り出す。
深いチョコレート色したネクタイ。
愛用している名刺いれと同じブランドの品を手に、彼を待った。
その首に縄をつけて、何処にも行かないように縛り付けられたらよいのに。
頭に浮かんだ不埒な考えに、小さく笑い目の前に停まった車に乗り込んだ。
運転する彼の太股に手を置いて、ハンドルに手を取られて抵抗できないのを良いことに悪戯を重ねて追い詰める。
ズボンの上から、太股から際どいラインまで人指し指で迷いこみ、円を描いてまた戻って。
上半身は何気ない態をよそおって、軽く窓の外をながめながら、ときおり不規則になる彼の呼吸を楽しんだ。
信号待ちで隣の車に並ぶたびに、さりげなく手を引いて。
何度かいさめられたが、僕に甘い彼は結局はおれ、存分にはりつめた筋肉の感触を思うだけ味わった。
たどりついたホテルの地下駐車場で、座席に縫いとめられて交わした口づけに喉を鳴らす。
この後の逢瀬を待ちわびて、身体の芯から熱をかえした。
唇を放した原西が、僕の顔を見て低く唸る。
何事かと見上げると、しばらく迷った後、観念した様にスーツの上着を脱いだ。
そこまで追い込んだつもりはなかったので驚いていると、頭から脱いだばかりの上着を被せられ閉じ込められる。
反論する隙を与えず、座席が倒され、暗闇の中でエンジン音が響いた。
そのまま再度走り出した車に、起き上がろうとした胸を片手で座席に縫いとめられて、抵抗を塞がれる。
「そんな顔を晒させて、外を歩かせるわけないじゃないですかっ」
色濃く欲をにじませた、低く響く声にゾクリと身体が反応した。
けれど。それ以上の身動きを押さえられたままで、視覚を奪われ胸にあてがわれた掌の熱をただ感じて目を閉じた。
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