1809人が本棚に入れています
本棚に追加
軽い気持ちでしかけた悪戯に、手痛いしっぺ返しをかえされて、生きた心地がしない。
頭に浮かぶもしもに怯えて、顔があげられず、うつ向いて原西の足を追いかけた。
不意に立ち止まった、原西の背中にぶつかって、体勢を崩す。
倒れると思った瞬間に、腰を抱かれて引き寄せられて、同時に響いたドアを開く音と共に室内に引きずり込まれた。
半分、玄関に倒れこみながら深く口づけられて、ホッとした。
食いちぎられそうな勢いで交わされる口づけに、呆れられたわけではなかったかと、緊張から固くなっていた身体から力が抜けた。
快楽よりもホッとした脱力感から崩れ落ちそうになりながら、与えられる口づけをただ受け入れる。
激しかった口づけが、段々と柔らかく情欲を煽るような動きに変化してきて、腰がおもく疼いた。
「頼みますから、アンタは自分をもっとよく見てください。」
見つめられている気がして、まぶたを持ち上げると。真剣な表情で、懇願された。
嫌われた訳ではないと分かると、途端に何時もの自分が顔をだしてきて、ムッとして原西を睨み付けた。
物凄く心配したのに。
悪戯を咎められるでもなく、訳のわからない説教を受けるいわれはない。
「アンタがそんなだと、俺はガキみたいになる。」
悔しそうに絞り出された声が真剣で、驚いた。
毎回、原西の反応には驚かされる。
新鮮すぎて、予測がつかない。
「子供でも、いいと思うけど。
我が儘なら、僕も負けないし。」
小首をかしげて答えれば、苦笑いされた。
「要はいいんですよ。
そんなとこも可愛いですから。
俺が我が儘を通したら、ただのガキです。
只でさえ、年下なんですから。」
原西が、我が儘なんかいった事があるだろうか。
思い返してみても、なにも思い当たらず困惑する。
「社長に贈られたものを、勝手に処分する部下はいません。」
「あれは、僕的には嬉かったけど、、、。」
悪戯に贈られた薔薇の話をされて、本気で面食らった。
「えっ!
まさか、あれが我が儘だっていうの!?」
驚きすぎて、思わず大きく口を開けた。
「俺に余裕があれば、もっと いい方法があったはずです。」
生真面目な顔で、反省を込めて呟かれて呆れた。
確かに部下としては頂けないが、恋人が横槍をいれてきた間男からの贈り物を笑って持ち帰らせたら、愛を疑う。
最初のコメントを投稿しよう!