新堂さんの初恋

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「えっ、出禁?!」 思いもよらない幼馴染みからの電話の内容に驚いて、思わず大きな声が漏れた。 久しぶりの要からの連絡に、若干はやる心臓を落ち着かせて、余裕の演技で電話を受けたのが台無しだ。 思わず心中で舌打ちして、本気なのか?と、改めて問い直した。 「僕の恋人の心が広かったから、これくらいですんだけど。 あれが原因で別れる事になったりでもしてたら、それじゃすまなかったよ?」 軽く温度を低くした声に、背筋が一瞬寒くなる。 この男はやるといったら、必ずやる。しかも、相手が一番ダメージを受ける方法と、時を選んで。 コイツの標的になるのだけは、御免だ。 「あんな可愛い悪戯で?」 それでも。 腑に落ちなくて、反論してみる。 確かに大人げなかったが。 恋人を目の前で誘惑したわけでも、過去の事情を露骨に見せつけた訳でもなく。 わざわざ、相手が一人になる時と、冷静に気を落ち着けるだけの時間を与えてから、ほんのちょっと意地悪をしただけなのに? 付き合って一年を越えるはずの二人には、倦怠期におとされたスパイスくらいの波紋で、忘れかけていた情熱を思い出させて、むしろ感謝されてもよいくらいの悪戯なはずだ。
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