新堂さんの初恋

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「聡司はなにか、思い違いをしてない?」 電話の向こうから楽しげな声が響いてきた。 楽しげで、艶のある。 昔から、当然のように俺の側にあった美しい声。 この声が、艶を帯びる瞬間が好きだった。 その時だけが、お互いに向かいあって、他にはなにも邪魔されることなく。快楽と言う甘い実をわけあえる唯一の時間だった。 白い肌が薄く色づいて、紅色にそまって。羞恥など微塵も感じさせず、純粋に快楽だけを追って妖艶に微笑む。 初めて抱いた時から、彼以上に俺を惹き付けるsexをする奴はいない。 己だけのものにしたいと、何度か誘いをかけたりもしたが。 その場だけの快楽の誘いには簡単にのるのに、決して恋人にはならない。 継続的な関係を約束したりもしない。 それでもいいと思っていた。 誰の物にもならないのなら、幼馴染みとして誰よりも側にいられたらと。 「次に原西君になにかしたら、許さないから。」 冷たい声で告げられて、身体から熱が奪われていく。 「なんで、お前がそこまで?」 声が小さく震えるのを止められなかった。知りたいという気持ちと、聞きたくないという本能がせめぎあって、俺の身体を震わす。
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