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「僕が彼を繋ぎ止めておきたいからに決まってるじゃない。
君は笑うかもだけど、本気で好きなんだ。
聡司がカードに書いてた通りだよ。」
聴いたこともない羞恥の色をわずかに滲ませた要の声に、真摯な想いが溢れていて。絶望に目の前が真っ暗になる。
あの要が?
あんな武骨な、腹芸の一つもできなさそうな若造に、本気で?
信じられない内容に、言葉がかえせない。
誰のものにもならないと、たかをくくって格好をつけていた自分が滑稽で、小さく笑いがでた。
乾いた笑いに、電話の向こうからため息が聞こえた。
「やっぱり、笑うよね。」
苦笑いを含んだ声でかえされて、無意識に頭をふる。
「いや。悪かった。
おめでとうと、言うべきかな?
それなら、幼馴染みとしては。要のいう通り、しばらくは鳴りをひそめさせていただくよ。」
「なんだか、聞き分けが良すぎて恐いね。」
要の嫌いな。無様なすがる男にならないように、軽く了承した。
電話の向こうでクスクスと楽しそうに笑う声が心地よい。
「何かあれば連絡してくれ。
待ってるよ。」
最後につけたした言葉には未練がましさが否めないが、数年もすればまたフリーに戻るであろう要に。多少こちらの気持ちを匂わせるくらいは許されるだろう。
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