サイレント・ナイト

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「あら?なんで原西君がいるの?」 クリスマスソングが流れる店内で、偶然出会った透さんが、かわいらしく小首をかしげて俺を見上げた。 今日は、初めて会った時のように地声を出してないんだなと目の前の物体の化けっぷりに感心する。 声まで女性化されると、どこからどう見ても妙齢の美しいご婦人だ。 あの日も店を一歩でた途端に、ガラリと変化した声に驚いたが。 こうして最初から女声をだされると、あのダミ声が幻だったかのような気さえする。 「だって、最初からコッチで喋ったら、男だって信じてもらえないでしょう?」 綺麗なピンク色した爪に、キラリとなにやら光る物体をつけた指先を顎において、頭を傾げて上目づかいに覗き込んでくる。 動作まで本物の女性のようだ。 全体の顔の造りは要と良く似ているが、同じ綺麗でも女性と男性ではこんなに印象が変わるのかというほど二人は似ていない。 それでも、よく見れば。涼しげな目元や、形のいい唇に。要によく似た影をみつけて思わず頬が上がった。 「要さんの行かれるクリスマスパーティに同行することになりましたので。」 新調したスーツを受け取りにと続くはずだった台詞を甲高い悲鳴で止めた。 「ウッソ。ヤダッ! カナちゃんたら、本気で本気なのね!」 やたらと興奮されて、眉を潜める。 先程見つけた面影は霧のように消え失せた。両手を身体の前で握りしめて、ピョンピョンと跳ねるテンションの高い透に軽く途方にくれていると、いきなり顔をあげられた。
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