1806人が本棚に入れています
本棚に追加
「でっ?!
貴方、まさかこの店でお洋服を、揃える気?」
勢いよく1歩つめよられて、後ずさる。
普段の自分では、手が届かない店だが。要の両親も参加するという場に着ていくスーツだ。
せめて格好だけでもマトモにと、ボーナスを注ぎ込んで新調したスーツを見て、透が眉を潜めた。
「駄目よ。
良く似合ってるけど、そのスーツでカナちゃんの隣に立ったらSP だわ。」
ガツンと殴られたような気がした。
確かに。要の着ているスーツの素材は、普段あまり見かけないものが多く、洒落ていて良く似合ってる。
対して俺の新調したスーツは、オーダーとはいえ流行りのデザインを少しだけ取り入れた普段にも使えるような無難なデザインだ。
この店は要も良く利用していて、会社できているスーツもオーダーしていたので大丈夫かと思ったが。
まさか付き人扱いされるとは、思わなかった。
要の隣に立って恥ずかしくない姿をと、自分なりにがんばったスーツを酷評されて内心へこんだ。
「あら?もしかして、勘違いしてない?
昼間で身内のパーティーだから略式でいいけど、ディレクターズスーツくらいは着といたほうが良いって意味よ?
良い生地だけど、ビジネススーツは浮くわよ?」
カナちゃんのエスコートなら、タキシードでも良いんじゃない?と。
キョトンとした表情でかえされて、首を傾げる。
きいたこともないスーツの名称に戸惑った俺を見て、透さんが何事かを思い付いたようにニンマリ笑った。
最初のコメントを投稿しよう!