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「それなら、お姉さんが教えてあげるわ。」
楽しそうに腕を引かれて、つれられていった店は、どう見ても個人宅で。
出迎えてくれた初老の男性に、透さんがなにやら耳打ちすると、満面の笑みで迎えられた。
それからは、先程の店では図られなかった箇所まで細かく採寸されて、スーツ地とおぼしき布を肩に、次々に掛けられた。
それを椅子に座ったままの透さんが、やたらと小難しい単語で指示をだすのに、店の主人が頷いたり。反論したりしているうちにどうやら用意ができたらしく。
受け取りは23日にと、微笑まれた。
されるがままに事が終わってしまい唖然とする。
それでも、せめて代金だけは自分で支払うと申し入れると、カナちゃんの初彼へのプレゼントだからいいの。と、有無を言わさぬ笑顔で断られた。
気持ちだけでもと再度申し出ると、
「カナちゃんのも一緒に頼んだから、二人にプレゼントなの。
歳上からの贈り物は有り難く受け取っておきなさい。
パーティーには間に合うように、届けてあげるから。」
それだけいうと、サッサと背中を向けて歩きだしてしまう。慌てて追いかけて礼をいうと、ニッコリと微笑まれた。
「身内の集まりとはいえ、おっそろしいオジサマ方もいっぱい来るんだから。
覚悟しときなさい。」
急に真面目な顔で忠告されて、戸惑いながら頷いた。
「私が長男なのに、こんなでしょう?
カナちゃんには、迷惑かけてきたからね。こんな事くらいしか応援できないけど、頑張りなさいね。」
ヒラヒラと手を振りながら、長い髪を揺らして、表情だけは妙に男前な笑顔を残して透さんは帰っていった。
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