サイレント・ナイト

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煽るような、誘うような動きに、無意識に喉をならして、たまらずジャケットを脱ぎ捨てる。 辛うじて残った理性で、床に落とさないようにソファの背にかけるように置くと、チラリと流した目線で制された。 「まだ、余裕があるね。」 どこかつまらなさそうに呟かれる。 要らしくない返答に、違和感を感じて頬に手を添えて上向かせると、欲望に濡れた瞳の奥で何かが揺れた。 戸惑い? あるいは不安か。 「要?」 「動いて良いとは言ってないよ?」 問いかけを止めるように。直接、刺激をあたえられて軽く目眩がしたが、その瞳に浮かぶ影が気になり、踏みとどまる。 「どうしました?」 突き上げてくる欲望を押さえ込んで、見つめると、眉を潜められた。 「随分と余裕だね。」 追求されたくないのか、俺の手を振り払い膝まづいた要の意図を察して、俺もしゃがみこむ。 ふと目のはしに写ったガラスに足首にズボンをまとわりつかせた間抜けな男がいて苦笑いした。
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