サイレント・ナイト

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「そうですの。 普段から親しくさせていただいて、彼の人柄には、惚れ込んでおりますの。 可愛い弟のパートナーとして、彼以上の人物はいないと思いますわ。」 ニッコリと、擬音がつきそうな笑顔で見上げられて固まりそうになる表情を何とか笑みの形にかえて、要の両親に向き合う。 「原西ともうします。 本日はお招き頂き、ありがとうございます。 要さんのご家族とお会いできるのを楽しみにして参りました。 これまで拝見したこともない素晴らしいクリスマスのパーティーで、感嘆いたしました。」 要の父親としっかりと握手を交わしながら、今日のお礼と感想をのべる。 口下手な自分には、美辞麗句を尽くして要の両親にあえた喜びを伝えることはできないが、自分にできる精一杯の誠意からでた言葉と、交わした瞳、力強く握った手のひらから要に対する真摯な想いが伝わるようにと力を込めた。 すると、それまで一言も口を開かなかった要の父親が、手と手が離れた瞬間に俺の肩にトンと手を置いて、ニッコリと微笑んだ。 「今日は、よく来てくれたね。 要は我が儘な子だが、君の様な相方を見つけられたことを誇りにおもうよ。 この会を気に入ったなら、これからも毎年いらしていただけると、嬉しいよ。 今日は、ユックリしていきなさい。」 そういって、要の髪をクシャリと混ぜてから人混みの中に消えていった。 「あら~。 もうひとおしくらいはするつもりだったのに。 タカちゃんってば、年上に受けのいいタイプ?」 両親が消えると、ビックリ。と、言わん張りの表情で透が俺を見上げてきた。 「ハッ?」 意味がわからず見返すと、 「僕の話す隙さえなかったね。」 同じく驚きの形に色どられた顔で、要がポツリと呟いた。 「あの我関せずのお父様に気に入られるだなんて、気を付けないと取られちゃうんじゃないの?」
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