サイレント・ナイト

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「怖いこといわないでよ。」 軽く身震いした要が、ものすごく嫌そうに透を睨んだ。 なんだかよくわからないが、要の父親に気に入ってもらったということか。 たとえ、ビジネスパートナーとしての認識とはいえ、やはり嬉しくホッとした。 透が聞きようによっては妖しい言葉選びをした時にはヒヤリとしたが、要の父親がおおらかな人で助かったとホッと息を吐く。 両親がいなくなると、役目は終わったとばかりに透も人混みに紛れてしまい、要と二人に戻った。 それから。 いつまでも見世物になることもないよと、要が言って広間から繋がったバルコニーへと逃げ出した。 12月の夜空の下は冷々としていたが、ベランダにはパネルヒーターが設置され、腰から下にジンワリと届く暖かい空気のお陰で、快適だった。 冷たい風が頭をスッキリとさせてくれて、思わず深呼吸する。 知らず知らずの内に緊張していたらしく、新鮮な空気に身体中の筋肉が生き返った気がした。 空には満天の星空が浮かび、どこからか鈴の音が響いてきても可笑しくないようにおもえる。 いつのまにか、要がベランダに寄りかかって、感心したように俺をみていた。 「どうかしましたか?」 不思議に思って尋ねれば、何故か苦笑いでかえされた。 「本気でわかってないのが、すごいよね。」 ため息とともに吐き出されたセリフに眉をひそめた。 「うちの父親ってね。 反対はしないけど、歓迎もしないタイプだと、思ってたから。 あんなに好意的に受け入れられると思ってなかったんで、本当ビックリなんだよ。」 「なにか、不味かったですか?」 てっきり喜んでいるとばかり思っていたので、予想外な要の反応に、思わず聞いた問いに頭を振られる。 「まさか。 上手くいきすぎて、驚いてるくらいだよ。 今日は、外野と母さんに対する御披露目のつもりだったんだけど。よもや、父さんに歓迎されるとは思わなかったな。」
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