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そんなに自分は頼りないだろうか。
いつも要に守られて、恋敵の相手さえまともにさせてもらえぬほどに。
「多賀谷様となにか御話しされたんですか?」
抱きよせた腕に力を込めてたずねれば、
「君が父さんに気に入られた話をしただけだよ。」
微笑みながら答えを返される。
それしては、随分と好意的だった多賀谷の態度に口をつぐむ。
「僕の親族は普通とはかなりかけ離れてるから。
君が気にすることはないよ。」
当然のように返された返事に、ため息を落とした。
「要は、俺にプロポーズしたんじゃないんですか?」
不思議そうに俺を見る要の額をそっとなぞる。
「そんなら、アンタの家族は俺の家族です。」
両手で頬を包み込んで、引き寄せた唇に口づけた。
大きく目を見開いて驚く要に再度口づけた。
「今はまだなにも知りませんが、一生側にいる気なら俺にも関わらせてください。」
淡い色彩に彩られた瞳を覗きこむと、数回瞬きを繰り返した要が微笑んだ。
その優しい微笑みに、見惚れる。
「そんなこと言うと、本気で逃げられなくなるよ?」
揶揄するようにかえされて、思わずまたため息を落とした。
「アンタは、俺が本気でいつか離れたいと言い出すと思ってるんですか。」
いささか憮然としてかえせば、覗きこんだ要の瞳の奥が揺れた。
「、、、わからない。」
暫くの沈黙の後、ポツリと呟かれた答えに本気で腹がたった。
毎日のように身体を重ねて、誰の目からみても自分が要に溺れきっているのは明らかなのに。
当の要だけが、俺の気持ちを信じない。
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