サイレント・ナイト

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要に未来を信じさせるだけの力をもたない自分にも腹がたつ。 何時になったら、要を手に入れたと思えるのか。 誰よりも側にいるはずなのに、とてつもなく遠く感じる。 不意に。 小さく身じろぎした要の動きに、身体が反応した。 感情の昂りに、押さえていた感覚の蓋が開いて、ただ重ねられただけの要の体温が肌を焼く。 無意識に飲み込んだ唾で、ゴクリと音をたてて喉がなった。 同時に今まで感じたこともないような狂暴な支配欲が身体の奥底から沸き上がってくる。 気がついた時には、身体を反転させて要を組み敷いていた。 「鷹志?」 急に様子のかわった俺に、訝しげに問いかけながらも、要が俺の首に手をまわす。 自分でもついていけないほどの急激な感情の変化と、熱をあげる身体に飲みこまれるように流される。 意識をとどめようと、溢れてくる情欲に抵抗するが、一度堰を切った流れは止められず。 身体の奥底から沸き上がる熱を唇から熱く吐き出す。 ちょうど引き寄せられて、要の首もとに顔を埋めていた俺の荒い息に、くみしいた身体が揺れた。 「大丈夫かい?」 心配そうに俺を見つめる要に言葉もかえせないほど、昂る。 思春期のガキのように目の前の肢体を食い尽くしたい衝動に狩られて、いつもより乱暴になる手の動きをなんとか押さえようと努力するが、止められない。
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