サイレント・ナイト

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切羽詰まった瞳を見て、思わず微笑んだ。 繋がったまま笑った振動が、思ったより原西を追い詰めていたらしい。 身の内で、固くはりつめた原西を感じて、焦らすように腰を揺らした。 「我慢しなくて良いって、言ったよね?」 手のひらで、目の前の突起を弄べば、熱い息を吐いて原西が頭をふる。 「アンタが良くないなら、意味がないだろっ。」 追い詰められて敬語の取れた恋人にゾクリと官能を刺激される。 平静の仮面を脱ぎ捨てた目の前の男が愛しくて堪らない。 思わず渇いた唇を舐める。 その姿を見て、原西の顎が上がったのを確認しながらユックリと腰を揺らした。 いまだに制止の声をあげる恋人に、いつのまにかたぎった己を握らせると、一拍の間の後で、一気に突き上げてきた。 両手で腰を捕まれて、下から喰われる。 空いた自分の手で、原西の頬をつかまえてその唇をむさぶる。 口づけというには、あまりに深い。 なにもかも。飲み込むように交わされる上下の交わりに、息があがる。 足りなくなった酸素を求めて口を開けば、追ってきた唇に縫いとめられた。 何度も、うわ言のように名前を呼ばれ、その切羽詰まった声音にさえ登り詰める。 内側から溢れる愛しさに、目眩がした。 感じすぎて、受け入れた場所が溶けて、穿つ固い楔と混じりあった気がする。 名前を呼びながら弾けた熱に連れられて、高く啼いた。 固く瞑った瞼の奥に、チカチカと瞬く星が見えた。 二人だけに見えた願い星。 あの星に願いをかけたら、ずっと一緒にいられるだろうか? ふと頭に浮かんだ疑問に。ひっそりと笑う自分と、本気で祈る自分を感じて、ユルリと口の端が弧を描く。 重い瞼を開くと、原西がいて。 幸福に満ちた微笑みを浮かべていた。 大好きな人が側にいて。 その人の幸福の中に自分がいる。 ちいさな頃に望んだ、クリスマスの全てが此処にある。 こんなに幸福な人間は他にいないと、恋人を呼び寄せてキスをかわした。
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