サイレント・ナイト

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不思議に思って見つめれば、子供にするように髪をなでられた。 「要を置いて、どこかにいったりしません。 恋人としてだけでなく、人としても要を尊敬してますから。アンタ以外の人間の為に働くなんて選択肢はありません。」 抱き締められた腕の中で、驚きに身をすくませる。 「、、、どうして?」 混乱して問えば 「夢中になって、素直な要は可愛かったですよ?」 揶揄するような口調にそぐわない、愛しみに満ちた眼差しで見つめられて、今度こそ本気で朱に染まる。 最中に無意識で口走ったらしい甘えに、恥ずかしさに身が震えた。 思わぬ失態に、悪態をつきそうになる唇をギュッとつぐむと、優しい指でなぞられた。 「俺は、嬉かったです。 アンタに追い付くまで、待っててもらえるだなんて夢のようですから。」 この一年で、随分と大人になった恋人の甘い囁きに天をあおぐ。
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