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この1年、必死に要を追いかけて。
やっと、たどり着いたかと思うと既にそこに要の姿はなく。
移り気な蝶のように舞って。
けれど、決して姿を消すほどには遠ざかることなく。
まるで俺を導くように先をゆく。
いつまでも、あの人の掌の中。
それが予想外に心地よくて、こまる。
甘えるよりは、甘えさせて。
溶けるほどに優しくして、護りたいのに。
俺のほうが要に、甘えっぱなしだ。
振り向いて、俺を見て微笑む。その笑顔にひかれ。
会うたびに、また恋に落ちる。
せめて。滅多なことでは、人に甘えないあの人の微睡む場所になりたいと願う。
今も、ただ逢いたくて闇雲に帰ってきた自分と違い。
暖かな部屋と、食事を手配して。
外回りばかりでたまっているはずの仕事を片付けて、駆けつけてくれている。
同僚から、要の様子はそれとなく聞いていたが。昨日の電話から響いた声音は、明らかに疲れが覗いていた。
無理をさせてしまったのかも知れない。
ただ。久ぶりに聞いた要の弱気な声に、どうしてもあって顔が見たかった。
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