Absence makes the heart grow fonder.

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「行っちゃうんだよね」 ポツリと呟かれて、その声音の真剣さに不謹慎にも喜んでしまう。 「1週間したら、帰ってきますよ?」 グラスについだペリエを渡しながら抱き締めれば、その1週間が長いんじゃないと拗ねられた。 先に弱音を軽口にしてくれるお陰で、俺が宥める側にまわれるようにしてくれる。 フワフワと揺れる髪の天辺にキスをして、大人しく要が食べ終わるのをまった。 ご馳走様でしたと合わされた手をとって、そのままバスルームへと抱きかかえた。 至れり尽くせりだね。と、笑われて。貴方の為ならなんでもと、なかば本気で笑って返した。 あと数時間の短い逢瀬を、惜しむように重ねて積み上げていく。 いつか、この人に。永遠の幸福をみせてあげたい。 二人の命が尽きるまで。 この想いが続けば、それはきっと永遠と呼べるはずだ。 願いというには、あまりに切実な想いが胸に溢れる。 恋と呼ぶには、想いが深すぎ。 愛と呼ぶには、甘すぎる。 誰よりも愛しい人にまた口づけて。触れることのできる距離に喜びに浸った。 誰よりも近くにいられることに、世界に感謝する。 しばらくは、またあえなくなるが。 離ればなれとなる時間も、甘く愛しい。 こんなにも要に夢中だと、気がつかされて我ながら呆れるが。自身がここまで誰かに夢中になれる人間で良かったとも思う。 確かに今、世界中の誰より幸福なのだと確信をもって言える。 1週間後には、沢山のお土産と共に、約束の印を贈ろう。 独占欲からではなく、誓いの証として。 なにがあっても側にいると。永遠の誓いをこめた証を、一年前の約束通り要に渡す。 そこに込められた意味に、要が気づくのは数十年後かも知れないが。 その時まで側にいて、誰よりも幸福だと告げて要を抱き締めたい。 これは誓いだ。 一生をかけた決意表明。 俺の生きる意味が、確かに今、この腕の中にある。
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