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起き上がって、たまには朝食でも作ろうかと身体を起こそうとすると、身を放した隙間から入り込んだ冷気を感じた篠田の腕に力が入りさらに抱き込まれる。
「おはよ。」
起きたのかと思ってかけた声に返事はなく。
身をねじって漸く見上げた篠田は、今だ夢の中だった。
珍しく眉間に皺をよせて、歯ぎしりでもしそうな程に口許が引き結ばれている。
悪い夢でも見ているのかと、回したままだった手で背中をなだめるようにポンポンとたたいた。
至近距離にあった篠田の瞼がふるえて、ギュッと寄せられたままだった眉がゆるむ。
ゆっくりと開けられた瞼からのぞいた瞳が俺を見つけると溶けるように優しく光った。
まわされた腕に力が入り、苦しく感じる1歩手前まで抱き締められて頭の天辺にグリグリと額をすりつけれる。
大きな犬のような動作に、思わず笑いがもれる。
起き抜けで、思ったよりでなかった音量のせいでかすれた笑い声に、篠田の身体がピクリと揺れた。
何事かと見上げた篠田の瞳が、淡く欲望に濡れていて引きこまれそうになる。
「なに?」
やっと返した言葉に、吐息を洩らした篠田が俺の瞼に口づけを落とした。
「、、、湊のかすれ声って、朝一聞くとヤベェよな。」
そう呟きながら、頬や耳元にもキスの雨をふらす篠田を引きはなそうとした手を捉えられて、シーツに沈められる。
「ンッ。」
茶化そうと開けた口を封じられて、熱の上がった下半身をすりつけれた。
つられて上がりそうになる熱を必死に押さえて、身をよじる。
このまま流されてしまいそうになる自分を内心でしかりつけて、篠田を睨み付けた。
「篠田っ。
俺、今日っ、検診」
その間にも身体をはい回る手の動きに、息が上がる。
俺の言葉に篠田の動きがピタリと、止まった。
こちらが心配になるくらい動きの止まったままだった篠田が、やがてゆっくりと顔をあげる。
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