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不本意を絵に書いたような顔で、一旦俺を放したかと思うと、再度抱きついてくる。
ムゥとも、ウゥとも聞こえる唸り声をあげながら、首筋に顔を埋めてジッと固まる。
子供のような篠田に、苦笑いしながら柔らかく押し返すと、渋々といった風情で身をはなした。
「送ってく。」
ベットから片足をおろした状態で、俺の手を引きながら起き上がったかと思うと、つないだ手を放さないままリビングへと向かった。
「只の再検査だし、お昼には帰ってくるぜ?」
相変わらず過保護な篠田に、笑いながら返せば
「家にいても、多分落ち着かねぇ」
ため息をつきながら呟かれて、先日のやりとりを思い出す。
今まで、病気らしい病気をしたこともなく。
毎年の健康診断も当然のようにオールクリアだった俺の検診結果に、今年はペカリと要検診のマークがついた。
胃のバリウム結果から、胃カメラでの再検査を進められて、その場で予約をとって帰宅し。
何気なく篠田に再検査になったと告げると、真っ青になり。終いにはチームドクターにまで電話をかけようとしたのを慌てて止めた。
以前バイクに跳ねられてから、俺と病院の組み合わせは、篠田にとって鬼門らしい。
更に間の悪いことに、再検査の予約がとれたのが3週間も先で。
その期間の長さから、余計に心配をかけることになった。
普段は何かと格好をつけて、なにも言わないのに。
最初の1週間は、世話をやかれているこちらが呆れるほど過保護に拍車がかかった。
あまりの過保護っぷりに俺が怒ると、考え直したのか落ち着きを取り戻したが。
今度は、何やら調べものができたらしく。一人で夜遅くまで起きていることが増えた。
手伝おうかと、水を向けても大丈夫だからと返されて。
心配のしすぎで、篠田のほうこそ胃を悪くしそうな勢いだった。
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