万有引力

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かなり長い間、眠っていたような気がする。 身体にかけられた毛布の重みに、自分がベットに横になっていることがわかる。 たしか、病院に行って胃カメラの検査の途中だったはずだ。 鼻から入れようとした胃カメラがはいらなくて、口からに変更し。 喉をカメラが通る違和感に、何度も吐きそうになった俺に、医師から鎮静剤を進められて承諾した。 数を数える看護婦さんの声を八まで追って数えたのは、覚えている。 そこから先の記憶がない。 ぼんやりとしながら、まぶたをあけた。 カーテンで仕切られた簡易ベットに、寝かされているらしいが、身体に力が入らない。 立ち上がろうとすると、吐き気と共に視界がグラリと揺れた。 起きるのをあきらめて、ゆっくりと頭をうごかして辺りを見回せば、ナースコールが目にはいり、ボタンを押す。 つながった先から、安堵を含んだ返答があり、看護婦が駆けつけてきた。 「気がつかれて、よかったです。 鎮静剤が効きすぎる体質の方って、たまにいらっしゃるんですけど。 喜多川さん、3時間も眠られたままだったから心配してたんですよ。」
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