万有引力

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にこやかに微笑まれながら、告げられた時間に思わず身を起こすと先程と同じく目眩におそわれて、再度ベットに突っ伏した。 「強いお酒に酔っぱらわれているのとおなじような状態ですから、今日は車の運転とかはされないようにして下さいね。 もう少し落ち着かれたら、診察結果を先生からお話しますね。」 相変わらず回る視界のはしで、看護婦さんの腕時計がチラリと見えた。 一時をとうに越して、二時近くをさす時計の針を見て、小さく唸る。 心配症の篠田のことだ。 きっと今頃、ジリジリしながら俺からの連絡を待っているはずだ。 「あの、どれくらいで帰れますか?」 寝たままたずねる俺をなだめるように微笑みながら、看護婦さんが紙コップに入った水をベットサイドの机においた。 「もう少し横になられてた方がいいですよ。 沢山お水を飲まれて、おトイレに何度か行かれると早くスッキリしますから。水差しごとおいておきますから、動けるようになったら、またコールしてくださいね。 帰るのは、目眩がおさまってからだから、、、五時くらいになるかもですね。」 そう話ながら、テキパキと俺の血圧と脈を計り、籠にいれたままだった荷物を手元にもってきてくれる。 「お電話使われて大丈夫ですから。」 ニッコリ笑って、看護婦さんはそう言い残すと白いドアの向こうに消えた。
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