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ドアが閉まるのを見送ってから、鞄から携帯をとりだす。
一時過ぎに、篠田から一度だけ着信が残っていた。
普段は、俺からかけるというと、いつまでも黙って待っているような奴だから、この着歴は篠田なりに悩んだすえの行動だろう。
朝も一緒にくるというのを、無理矢理置いてきた自覚があるだけに、何だか申し訳ないような気になる。
もっとも、あのまま篠田と病院に向かったら、たどり着くまえにどこかに寄り道してしまいそうな自分を押さえられない気がしたからなのだが。
篠田の番号を表示して、通話ボタンを押した瞬間に、ワンコールもならずに電話がつながって、面食らう。
「、、、湊か?」
緊張を含んだ固い声音に思わず額を押さえた、よほど心配していたのか話はじめても声は強張ったままだ。溜め息とともに、連絡がおそくなった謝罪と今の事情を説明する。
焼肉は無理そうだから、お昼は先に食べていてくれと伝えると、病院の待合室にいるから終わったら教えろと言われて思わず笑った。
「下手したら夕方になるかもだし、俺は食欲ないから。お前は絶対食べとけよ。」
黙っていたら、俺に付き合って昼飯を食べずに過ごしそうな篠田に釘をさす。
何となく、すぐそばに来ているような気がしていた。
予想通りの答えに、俺も大概甘やかされているよなと苦笑いする。
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