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篠田の声を聞いて、安心したのか。ちょっと目を閉じただけのつもりだったのに、次に目を開けたときには一時間がたっていた。
短い時間だったのに、かなり深く眠ったのか随分とスッキリとして頭の中にかかっていた霧が晴れたようだ。
連絡が途絶えて、心配しているだろう篠田に、あわてて「悪い。寝てた。」とlineをおくる。
食事中かもしれないから、念のため電話はさける。
直ぐに既読マークがついて、「具合は?」と返信があった。
起き上がってみると、先程よりは目眩が治まっていてホッと息を吐く。
「大分、良くなった。」と送ると、一言「そうか。」と、素っ気ないコメントと、どこで手に入れたのか、随分と可愛らしい絵柄の喜んでいるキャラクターのスタンプが送られてきて思わず吹き出した。
ついこの間、交わした会話を思い出す。
なにげなく。スタンプとか使わないよな。とたずねると、盛大に眉をよせて
「、、、どうやって使えばいいのか、よく分かんねぇ」と、唸っていたのに。
どうやら、いつの間にか使い方をマスターしていたらしい。
篠田のあの大きな手で、チマチマとスタンプを選らんで押している姿が目に浮かんで、笑いが止まらなくなる。
いつもは要件のみの短い文章ばかり送ってくる男が、どんな顔で送ったのかを想像すると、おかしくてたまらない。
ちょうどその時、ガチャリと音がしてドアが開いた。
先程、診察をしてくれた医師が顔を覗かして、笑いの止まらない俺を見て、目を見開いた。
「あれ?
もしかして、ハイになっちゃってます??」
焦ったようにそういいながら、スリッパをパタパタさせながら側にきた。
「あ、いえ。
友人からきたlineが、ちょっとツボにハマってしまって。」
可笑しな場面を目撃されて、恥ずかしさに頬に血がのぼる。
頬の熱さに、真っ赤になった顔色を自覚するが、どうにもならない。
観念して、下を向いていると、暖かい手で額を触られた。
「熱はないようですね。
目眩はおさまりました?」
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