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「取ってはいけないということもない感じです。」
柔らかな口調でキッパリと曖昧にかえされて、一瞬とまどう。
けれど、取り除いてしまえば再発しない限り問題はないし、自分の病院なら今日の薬の効き具合も含めて安全に取り除けますよと言われて頷いた。
「そしたら、お休みとれたらlineでご連絡頂けます?
僕、今日は応援でこの病院に来てるんで。
患者さんを取ったってなると不味いんで、個人的にご連絡いただけると助かるんで~。」
そう言いながらスマホを振られて、思わずつられて自分も振る。
ピコンと、音がして 「タクミ」と名前が表示された。
「湊君ですね~。
了解しました。ご連絡お待ちしてますね。
今日はもう帰られてもいいですから。お気をつけて。」
そう言うと、湊が口を開く間もなく、ドアに向かい「毎度~。」と出前の注文でもとったかのような口調で挨拶しながら去っていった。
あっという間の出来事に、しばらく唖然としてドアを眺める。
よく考えたら、タクミという名前らしい医師の勤める病院名もしらないままだ。
なんだか狐に包まれたような気がするが、既に番号は交換ずみだ。
まぁ、女の子でもないし気にすることもないかと、気を取り直す。
待ちくたびれているであろう篠田に電話をかけながら、荷物をまとめると湊も病室を後にした。
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