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チラリと時計に目をやると、既に八時をさしていて。
散々だった終わりかけの休日に、ため息をつく。
「昨日から、なにも食べてねぇから。鍋にでもするか。」
俺の頭をクシャリと撫でてから立ち上がった篠田の後を追って、キッチンに移動する。
俺の体調を気遣って、座っていろと言う篠田を押しきって皿を手に取り、テーブルセットしていく。
なにかにつけて際限なく甘やかそうとする篠田から、頼むから座っていてくれと泣きが入り、軽く膨れながら食卓についた。
「次は、いつ行くんだ?」
大きな手のひらの上に豆腐をのせて、器用に切り分けながら訪ねられて、カレンダーに目をやった。
「職場の人に聞いてからだけど、来週の火曜か金曜になりそうかな。」
夕方にタクミから届いたlineを思い返しながら、そう答える。
「火、金か、、、。
俺は休めねぇけど、来週は湊が土日休みだろ?
金曜に受けたほうが、楽かもしれねぇな。」
そういいながらも、手際よく大量におろした大根を鍋に投入すると、机においたカセットコンロの上に鍋をのせて席につく。
休みの日には、晩酌しながら夕飯をつつくのがいつものパターンだが、今日は俺に付き合って飲まないつもりか、飯まで先についである。
「相変わらず、手際いいよな。」
あっという間に出来上がった夕飯を前に感心する。
こういうの女子力高いって、いうんだろうな。と、頭の中で呟いて、篠田にまったく似合わない単語に笑いそうになる。
「20年近く作ってたら、こんなもんだろ。」
鍋奉行よろしくつぎわけながら、不思議そうにかえされて憮然とする。
「、、、俺は家でて10年だけど、レシピ見ないでつくるのなんて、ムリだぜ?」
いただきますと、手をあわせながらかえせば、何故か篠田の機嫌があがる。
「レシピがあれば作れるんなら、十分だろ。
それに、湊の飯は俺がつくるから、お前は上手くならなくても大丈夫だしな。」
すました顔で宣言されて、思わず顔をあげた。
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