第1話

万有引力

篠田のああいうところは可愛らしいと現してもよい気がする。

女の子的な可愛らしさとはまた違うが、可愛いとしか表現できない態度に、どうしても口角があがる。

試合の時はポーカーフェイスで。
全く読めない奴だったのにと、思い返すとなおさらおかしい。

なぜだか止まらない笑いに、やっぱり少しハイになってるのかなと疑問におもう。

その時、携帯がなってタクミからメッセージが届いた。

手術当日の注意点と、現在の体調をたずねられて、今の様子を送る。

「うちの麻酔科医は腕がよいので、次回はトリップせずにすむと思うよ」と送られてきて、思わず吹き出す。

気楽なメッセージに、ついイタズラ心がわいて「今日の人はイマイチなんですか？」と、送り返すと

「いいえ～。検診だと、規定量がきめられてるんで、不可抗力ですねぇ」と、返信がきたと思った瞬間に

「グッドトリップされたいなら、個別にご相談にのりますよ。」と、コメントがつき、猫が親指をつきだしているスタンプがきた。

本気なのか、冗談なのか判別つきかねるメッセージの応酬をかわすうちに、何となく不安だった手術の様子もわかり、ホッとした。

医者とはおもえないほど、ゆるい人だと思ったが。あぁ見えて、やり手なのだろう。