1806人が本棚に入れています
本棚に追加
最初は不安だった手術も、タクミの書いているとおり、「寝てる間に終わるちょっとした簡単なもの」という気がしてきた。
これから当直だというタクミに、礼を送ってスマホを置く。
しばらく考えてから、着替えを取りに部屋に戻ると、篠田のいる浴室に向かった。
「湊?」
カラリと音を立てて浴室に入ると、篠田が驚いて立ち上がる。
「そんなに、驚くことないだろ。」
篠田のリアクションの大きさに驚いて、思わず締めたばかりの扉を開けて、でていきたくなる。
が、せっかく意を決してドアを開けた先程の気力をふりしぼって、なんでもない風を装おって、かけ湯をしてから湯にひたる。
ポチャリと肩まで浸かれば、まだ立ったままだった篠田も、遅れて湯船に沈んだ。
なぜか二人で押し黙って、じっと湯にひたる。時折、小さく水音がはねるが妙な緊張感がただよっていて、やたら気恥ずかしい。
家族向けにつくられた大きめな湯船だが、さすがに大の男が二人も入れば窮屈だ。
手術着には着替えてもらうけど、口から胃カメラみたいなものを入れて切り取るだけだから。と、先程タクミから送られてきたlineの内容を伝えようとして、口をつぐむ。
洋服にかくれる範囲なら、痕がついても構わないと言わんばかりではないだろうか。
、、、あからさまな誘い文句を口にするより、恥ずかしい気がする。
チラリと横目で篠田を見やれば、不自然なほど頑なに視線を壁に向けたままだ。
何時もは、気がついたら、そういう雰囲気でなし崩し的に始まっていることばかりなので、こうして篠田が自粛していると、どうやってそういうことに持ち込めばいいのか、サッパリだ。
最初のコメントを投稿しよう!