万有引力

33/74
前へ
/350ページ
次へ
どう反応してよいのか分からず、固まったまま。タクミの真剣な眼差しを見返した。 予想外の出来事に、額にジットリと脂汗がうかんだ。 動かない身体とは別に頭の中はバタバタと騒がしく、思考がさだまらない。 そのまま、かなり長い時間、見つめあっていた気がする。 「、、、もしかして、困ってます?」 固まったままだった視線をフッと下に落とされて、はりつめていた空気がゆるんだ。 「あのっ、すいません! 俺、全然分かってなくてっ。」 やっと身体が動くようになった俺が、勢いこんで謝罪を口にしようと開けた唇を。大きな手のひらに塞がれて言葉が途中で消えた。 「それって、断り文句ですよね。 、、、だったら、聞きません。」 大きな手のひらの中で、モゴモゴと消された言葉にかぶさるようにかえされて、二の句がつなげない。 それでも、なんとか断ろうと再度口を開く。 塞がれた手のひらに唇が触れた瞬間に、火傷でもしたかのような勢いで、手を引かれた。 「あのっ、気がつかれてなかったんですよね? そしたら、一度でいいんで、そういう目で僕を見てください。 、、、できれば、返事はそれからにしていただけると、嬉しいです。」
/350ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1806人が本棚に入れています
本棚に追加