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胸がつまって、なにも言えない。
うつ向いて、激昂しそうになる感情を押さえようと息を整える。
ふと、影が落ちて。顔をあげようとしたところを押さえこまれて、抱き締められた。
篠田より幾分線の細いうでの中で、もがこうとしたところを更に強くだきしめられる。
「お身内が大変な時に、わがまま言っちゃいましたね。」
頭の上で、ポツリと呟かれて、抵抗をとめた。
「すいません。
さっきのは、忘れてください。
ご友人は、明日には気がつかれると思いますよ。」
慰めるように頭を撫でられて、堪えていた涙がこぼれた。
「大丈夫です。
これでも10年以上は医者として勤めてますから。こう見えて、勘もするどいんですよ。」
ポンポンと背中を叩かれて、溢れだした涙が止まらない。
「ご友人が突然入院されて、ビックリされましたよね。
大丈夫。
僕、名医ですから。」
恋敵と言えど、患者さんの差別はしないので安心して、まかせてください。と、何時もの、のんびりした口調で励まされて、思わず笑う。
やはり篠田のことはバレていたのかと思うとともに。それでも告白し、振られたばかりの相手を慰めるなんて辛いだろうとおもうのに。
一度決壊した涙腺はなかなか止まず。それからしばらく、タクミになだめられた。
はり詰めすぎていて神経が限界を越えていて、情けないほど涙が止まらない。
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