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「あの、もう大丈夫ですから。」
まだ涙は止まっていないが、いつまでも甘える訳にはいかないと、両手をつっぱねる。
その腕を優しくはがされて、再度だきしめられた。
「あ~。
できれば、お互いのために、泣いてる間はここにいてください。
僕。貴方の泣き顔に惚れたんで、そんな顔を見せられるほうが目の毒なんで。」
力強く抱き締める腕に力は入れるくせに、明後日の方向を見ながらタクミに告げられる。
僕に顔が見えないほうが、湊くんも安全ですよと、困ったように呟かれた。
「、、、泣き顔なんか、いつ見せました?」
疑問に思ってたずねると、一瞬いいよどんだタクミが申し訳なさそうに白状した。
「、、、、最初の胃カメラの時に。」
気まずげにかえされて、首をかしげる。
「すいません。
、、、あんまり好みだったんで、わざと苦しくしました。」
「ハッ?」
衝撃の告白に、思わず涙も止まってタクミを見上げた。
「湊くん、苦しくて涙目になってるのに、僕と目線を外さなかったでしょう?
、、、、あれ、かなりキました。」
何故か頬を赤くしながら告げられて、思わず身体を離す。
「あぁ、そんな目で見ないでくださいよぅ。」
情けなくたれた眉をしながら泣きつかれても、かなり苦しい思いをした湊としては、思わずじとめでにらんでしまう。
タクミは何やら言い訳をいいつのっているが、あまりの衝撃に、涙と、先程まで漂っていた何とも言えない雰囲気がいつのまにか四散していて、湊はホッと息をはいた。
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