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目を瞑ったままの篠田の手を握って、そっと額によせた。
少しでも早く目が覚めますようにと、願いをかける。
普段は俺よりも体温の高い篠田の指先が。
今は冷たくて、泣きそうになる。
薄い布団のかかった篠田の胸元に耳をあてて、静かに時をきざむ心音にホッと息をついた。
このまま、篠田が目覚めなかったら、どうしよう。
そうなった時。今だ会ったことのない、篠田のおじは、同窓生というだけの俺が篠田の側にいることを許してくれるだろうか。
ドンドン暗いほうに沈みそうになる思考回路をあわてて止める。
「あれ?」
カチャリと軽い音をたてて空いたドアから、タクミが顔をだした。
ノブのまわる音に驚いて、跳び跳ねるように身を起こした俺をみて不思議そうにしている。
「えっ?
付き添い人って、湊君だったの?」
わずかに開いたドアの隙間から、身を滑らすように静かに入ってくると、篠田の様子を軽く横目にみてから近づいてくる。
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