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「なんだぁ。なら、もっと早く来たらよかったなぁ。」
ニコニコと笑いながら、あふれる好意をかくそうともせずに歩いてくる姿にフッと肩の力がぬけた。
篠田を見ていると犬のようだとよく思うけれど、タクミはまるで猫のようだ。
眼鏡の向こうに見える目が、時々クルリと表情をかえて、何事かを企む子供のようにキラリと光る。
会うたびに楽しそうで。一緒にいると、つい落ち込みそうになる気分を引き上げてくれる。
今まで自分のまわりにはいなかったタイプだ。
只の友人として仲良くなれたら、きっといい友達になれたのに。
告白を断ってからも態度は変わらず。飄々としたままだが、これだけ好意を向けられれば諦めた訳ではないことくらい自分にだってわかる。
気持ちに答えられない以上、例えタクミにたいして好ましく思っているからといって、あまり親しい態度をとるのはかえって残酷だろう。
「夜勤続きなんですね。
お疲れさまです。」
昨日。つい、ため口になってしまった口調を意識して敬語に戻して距離をとる。
「夜働くほうが、調子がいいんですよね~。
僕、きっと夜行性なんですね。」
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