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おどけた表情をうかべるタクミに、小さく笑い返す。
すると、何故か眩しそうに目を細めて、微笑みかえされた。
それから、無言で篠田の脈を図り、心電図を覗きこんだ。
「検査した限りでは、なにも異常はないんですよ。
今日のお昼には目を覚ますかなと思ってたんですけど。」
タクミの説明をききのがさないよう、じっと耳をすませ、無言で頷く。
「、、、よくない状態なんですか?」
なるべく平静をよそおうが、小さく声が震えるのだけは、止められなかった。
「症状としては、なんとも。
ぶつけた場所が頭なので、意識がもどらないことには、僕たち医者にできることって、あんまりないんです。
ただ、意識が覚醒するまであまり時間がかかるようだと、心配ではありますね。」
タクミの一言に、頭から一気に血の気が引く。
椅子に座っているのに、崩れおちそうになる身体を無意識に両腕で抱きとめた。
フンワリと、慰めるようにタクミの手が頭を優しく撫でた。
「大丈夫。
1週間から一ヶ月くらい目を覚まさなかった患者さんもいますから、まだ全然心配することは、ないですよ。
ただあんまり長く寝てると、リハビリが大変でしょうね。彼はスポーツ選手ですから、特にね。」
そういいながら、タクミは同情をこめた目で篠田を見やった。
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