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怪我もなさそうだし。
剥かれてはいるが、事には及ばれておらず平気そうではあるが。
「大丈夫ッス。
ちょっと油断してました。
すいません。」
申し訳なさそうに謝る喜多川に、
「お前が謝るな」と告げながら、倒れている男を後ろ手に縛り上げる。
馬鹿な男だ。
男相手に良からぬことを妄想した己が思う資格もないが、同意のない行為などただの暴力だ。
男に思われても、大概の男にとっては対象外としてきみのわるい思いをさせるだけだ。だからこそ、自分も新堂から離れようとしているのだ。
ロッカーを開けて、替えのシャツを取り出そうとすると、申し訳なさそうに自分の鞄をとってくれといわれて、足元に落ちていた鞄を拾って投げてやる。
モソモソと着替え始めたので、新堂を振り返ると、目を瞑りくったりしている。
怪我はなかったが、目眩がとまらないらしい。
「で、どうする?
暴行事件でたれこむか?」
と、真顔で聞くと、
「先輩、刑事ドラマの見すぎです」
そう、笑いながら首を横にふられる。
そうか?と眉をあげるが、苦笑いを返す後輩が平気っす。と返すため、ヤレヤレとため息をついた。
会社としての処分は別途くだるだろうが、警察につきだして当然と考えていたので腑に落ちない。
やがて騒ぎに気がついた残っていた社員が様子を見にきたので、喜多川が襲われたことはいわず。
只いさかいがあったとだけ告げて、男を連れてかえるように伝えた。
床に倒れている同僚をみて驚いていたが、なにか感ずるところがあったのだろう。
それ以上、なにも聞かずに頷いた。
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