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様子を見にきた社員は古株で、気心も知れていて口も固い。
残っていた社員が彼でよかった。
後ろから聞こえてきたカタカタという小さな音に顔をあげると、喜多川が
「あれ?」と言いながら、丸まって座り込み震えの止まらない両手を見つめていた。
男が姿を消して、やっと安堵した所に先程のショックがよみがえってきたのだろう。
「近づいても、いいか?」
自分と同じような体格の男に襲われた喜多川に、側による許可をとろうとするが、明らかに怯えた顔をされた。
今日は一人にしないほうが良いと思うが、一緒にいるのが自分では逆効果だろう。
「篠田君に連絡して。」
横になったまま、新堂が此方を向いて指示をだす。
先程より大分しっかりした声で話す新堂に、ホッとしつつ。
いくら仲が良くても大柄な篠田では、自分と同じで恐がるだろうに。
らしくない内容に訝しむ。
だが、喜多川が篠田の名前がでた瞬間にホッとした様な表情を浮かべたのをみて携帯に手を伸ばした。
「篠田の番号はわかるか?」
訊ねると、スラスラと空で番号を読み上げる。
言われた番号に発信すると、短いコール音の後に篠田がでた。
愛想のない返事を返す篠田に名乗ると訝しげに返事をされる。
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