原西と社長

31/42

1809人が本棚に入れています
本棚に追加
/350ページ
「僕のこと、嫌い?」 また首をかしげられ、頭を横にふる。 驚きすぎて馬鹿みたいな反応しか返せない。 ふとみた新堂の瞳が不安げに揺れていて、思わず抱き寄せた。 「嫌いなわけないでしょ。 好きです。 ものすごく。」 返した言葉に、嬉しげに笑われてジンワリと胸に暖かいものがひろがる。 本当に? 新堂が自分のことを? 今だ信じられないが、胸に感じる暖かさと、新堂の甘い匂いは腕の中だ。 「アンタが好きです。アンタが望むことなら、なんでも叶えてやりたい。」 力を込めて抱き締めると、しなるように身体にそってお互いにピッタリと密着した。 「良かった。 一生いわない気かと思ったよ。」 深く安堵を込めたよく響く声が耳許でここちよく響く。 「要。 あんたじゃなくて、名前で呼んで。」 ねだられた内容に頬がゆるむ。 「要が好きです。 要を喜ばしたいのに、俺を喜ばせてどうするんですか。」 名をよぶと、ウッスラと頬を蒸気させて目を伏せられた。 その姿は可愛いのに、とても綺麗で。 逃がさないように。 抱き締める腕に力を込める。 何かを思い付いたらしい要が顔をあげた。 思わずのぞきこんで「ん?」と、いいよどむ要に先を催促した。
/350ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1809人が本棚に入れています
本棚に追加