原西と社長

33/42

1809人が本棚に入れています
本棚に追加
/350ページ
「やっと。抱き締められた。」 目を瞑り、腕のなかの体温を噛みしめながら囁く。 くすぐったそうに身じろぎして、キュッと抱き締めかえされた。 「それは、こっちのセリフだよ。 何年待ったと思ってるの。」 呆れたように返される言葉まで甘い。 見つめたまま引かれあうように口づけた。 柔らかな唇に触れるだけのキスを落とすと 「、、、足りない」 と呟かれて、追ってきた唇に捕らえられる。 隙間もないほど、ピッタリとあわさった唇は、口づけを繰り返す程にとけて深く重なりあう。 「ハッ。」 熱い息を放ちながら、唇を離しても、 「まだ、駄目。」 といって甘い唇が追ってくる。 「、、、我慢できなくなるんで、離れてもらえます?」 抱き締めていた手を上にあげて、降伏の意思を示した。 「我慢なんて、なんでするの。」 怪訝な顔をして、熱い息を吐きながら囁かれて、クラリと目眩がする。 抗いがたい誘惑に、堪らなく高められるが、、、 「職場ですよ?」 なけなしの理性で諭すが、スルリと頬をなでれて、それはそれは妖艶な顔で微笑まれた。 思わず生唾を飲む。 「それに社長室。 男冥利につきるじゃない。」 白旗をあげた手に、要の手が重ねられてユックリと指を絡められる。 合わさっていく指と指さえ艶かしい。 「欲しがってるのは、僕だけ?」 潤んだ瞳で見つめられ 「馬鹿いわんでください。」 堪らず。なけなしの理性を手放して、社長机に要を押し倒した。 指を絡めたまま口づけを交わす。 今までの情欲を耐える為のキスではなく。 身のうちで燃える火を更にあおる様な、まるでお互いが混ざりあうかのような口づけを。
/350ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1809人が本棚に入れています
本棚に追加