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カタンと小さな音をたてて椅子を引くと、篠原は静かに座った。
篠原は手に持った教科書のページへと視線を落としている。
少し癖のあるもっさりした黒髪に、オシャレ目的ではないと一目で分かる黒縁の眼鏡。
まるで見本のようにきっちりと制服を着ていて、見ているだけで息苦しい。
いかにも優等生といった感じの見た目だ。
ハッキリ言って、ダサい。
服装だけじゃなく、全体的に。
ぼんやり眺めていると目が合ってしまい、びくっと小さく肩が揺れる。
「……どれ、読む?」
独り言のようにぼそりと篠原は言った。
その喋り方からも、根暗なオーラが発されている気がする。
俺はとりあえずペラペラと教科書のページをめくってみるも、詩なんてよく分からない。
偉そうに載っているけど、それっぽい言葉を並べたら自然とこうなるんじゃないだろうか。
俺は深く悩むこともなく、一番短い詩に決めた。
とにかく早く終わらせたい一心で、出来るだけ早口で読む。もちろん、感情なんて込めたりしない。
途中で何度か噛んでしまったが、気にせずにそのまま終わらせた。
「はい、終わり。じゃあ次、篠原」
篠原は教科書に視線を落としていたが、ゆっくりと顔を上げる。
視線が合いそうになり、俺は少し目を逸らした。
今まで気付かなかったが、篠原と視線を合わせるのは苦手みたいだ。
なんだか、心を見透かされているような気分になる。
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