第1章

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「相島ーっ」 目の前でひらひらと手が振られ、俺はハッとして声の主を見た。 ツンツンとした明るい茶髪にヘアピンをつけた男子――友人の牧だ。 牧は俺の顔を覗き込み、手にはコンビニのビニール袋を持っている。 「なにボーッとしてんだよ。昼飯食おうぜ」 ニッと八重歯を見せて笑うと、牧は俺の隣に座った。 先程、篠原が座った席だ。 にこにこと笑顔を浮かべる牧の姿を眺めてから、俺は小さくため息を吐く。 「……牧って悩み無さそうだよなぁ」 「え、サンキュ」 「褒めてねーよ」 「えー、褒めてくれよ! 俺は褒められて伸びるタイプなんだって!」 「それなら縮んでろ」 くだらない会話をして、笑いあう。 しかし、俺はふと視線を逸らしてしまった。 篠原は、いつもどこで昼飯を食べているんだろうか。 教室を見まわしてから、篠原の姿がないことを知って少し残念に思ってしまう。 そんな俺を見て、牧はにやりと悪戯っぽく笑った。 「おやおや、誰狙いなのかな? まさか、クラスのマドンナ綾瀬とか?」 「違ぇよ、ばーか」 素っ気なく答えると、俺はメロンパンをかじりはじめる。 「ちぇっ」と言いつつも旨そうに焼きそばパンを頬張る牧を見ながら、俺はぼんやりと考えていた。 いつか篠原に話しかけてみようかな、と。
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