雨の日

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次の瞬間、まるで水柱が崩れ落ちるように、 女の姿は崩れ落ちた。 「どうしたんですか?」   同僚に話し掛けられて、我に返った。 先ほどの光景はなんだったのか、 窓の外はいつも通り多くの車が通り、 雨のせいでいつもよりは少ないとはいえ、人通りもある。 「ああ、いや、なんでもない」   あれは、寝不足の俺が見た白昼夢だったんだろうか。 頭を振って気持ちを切り替え、仕事に戻る。   ……数日後。 数年前のやはり雨のあの日。 あの場所で歩道にトラックが突っ込んで、 死亡事故があったことを知った。 死んだのが、女だったかどうかは……わからない。 <終>
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