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満月が映し出す、一本の桜の前に私はいた。
樹齢百年は超す、大きな一本桜。
その根元を一心不乱に掘り進む。
かつん
シャベルの先に、堅いものが当たった。
壊さないように手で、慎重に掘り出す。
……あった。私の、骨。
出てきた頭蓋骨に付く泥を、手で丁寧に取り除いて綺麗にする。
愛しい、愛しい、……一つ前の、私の、骨。
待たせたね。いま、代わるから。
翌日。
散歩に来た近所のものが、
一本桜の根元に転がる頭蓋骨を見つけて騒ぎになった。
しかし、付近にはどこにも掘り返した形跡がなく、
気味の悪い怪談話として噂が残るだけになった。
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