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「お。治ったの?」
振り返った彼の表情はいつもどおり、飄々としている。
「……うん。おはよう」
ボソボソっと挨拶したオレを二度見して、星児さんは微かに目を見開いた。
「おう、おはよ」
話題がなくて、それきりお互いに黙って支度をする。
……この緊張感、ハンパないなオイ。
しばらくは続くかもしれない。
まあ、しかたのないことだ。
ぎこちなく着替えを済ませ、最後に必須事項の鏡前チェックをしていると、先に支度を終えた星児さんが脇をすり抜けた。
すれ違いざまにひとこと。
「取って食いやしないからそんな緊張するなよ」
あ、バレました?
「……あんただっておんなじだろ」
苦し紛れに言い返すと、相手はグッと言葉を詰まらせた。
ほら、図星。
オレの緊張だけで、こんなピリピリしねえっつーの。
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