壊して

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 オレが意地を張らずにチャイムを押せていたら、ふたりの間に刻まれていた溝も、少しだけ早く埋まっただろうに。  チカをひとりで苦しませることもなかったのに。  ……なんて。  いまさら、か。  年始の開店は4日から。  オレはそれより2日遅れで、ようやくタイムライン∞カフェに返り咲いた。 「あ、ラスボスだ」 「ラスボスくん、おはよ」 「ラスボスおつかれ」  岡部さんが増殖してる。 「おはようございます。ご迷惑おかけしました。もう元気なんで」  チカのお陰で。  みんな口々に「お互い様だよ」と言って笑ってくれた。  まあ確かに、オレが全員の穴埋めをしたようなものだったっけ。  新年早々からイケメンオーラ全開の先輩たちにヘコヘコッとしながら、事務所を過ぎてロッカールームに向かった。  ドアを開けると、おっと先客。
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