3 失われた記憶

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 相手は、しばらく興味深そうにオレをしげしげと見ていたが、やがて、慣れた様子で奥へ入っていき、さっそく北城慧と仕事の打ち合わせを始めた。  これは、しばらくたってからわかったことなんだけど。  こういう仕事って、ほとんど人にも会わず、1人で黙々とやるものなのかなと思っていたら、この職場は意外に来客が多い。それも――圧倒的に女の人が。  本当なら、電話やメールだけで済むような用でも、「今日はたまたま近くを通りかかったから」とか何とか言いながら、お客さんが手土産を持ってやってくる。 (慧目当てだ……!)  女の人たちのうきうきした様子から、オレにはすぐにわかった。
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