3 失われた記憶

12/29
前へ
/39ページ
次へ
 ある日、慧がたまたま出かけていて、帰ってくるまでの15分程度、オレが1人でお客さんの相手をすることになった。  お客さんは以前からのお得意さんで、インテリア事務所の40代の女性、有村さん(あの、オレの顔をしげしげと見た人だ)。  慧がこのマンションに住み始めたとき、部屋のコーディネートをしてくれたのもこの有村さんだそうで、慧とは、彼がまだアルバイトをしていた頃からの知り合いらしい。 「すいません、北城は急な用事で外出していまして──もうそろそろ戻ると思いますので」  お茶を出しながらそういって謝ると、彼女はまた、オレの顔をじーっと見て言った。 「あなた……北城くんと一緒に、ここに住んでるの?」
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加